中島 聡
公益社団法人日本アドバタイザーズ協会専務理事
一般社団法人デジタル広告品質認証機構代表理事
日本広告審査機構理事、ACC理事の他、マーケティング広告関係の複数団体の委員を務め、マーケティング及び広告活動の健全な発展のための活動を行っている。同時に明治大学大学院及び高千穂大学大学院にて教鞭をとり、若い世代の人財育成活動を行っている。
2025年新たな年の幕が開きました。人生後半ならぬ終盤が訪れた我が身をじっくりと観察すれば気持ちはまだまだ20歳代後半のつもりでいるものの、物理的劣化は目を覆うばかりです。何か年齢相応に成長した部分は無いかと心と頭に問いかけましたが答えは「?」の1文字です。改めて己を俯瞰した場合、「情けないな~」の一言しかない己がまたまた情けないと感ずる日々です。
そうした中で頭にフト浮かんだフレーズが表題のフレーズです。人生100年時代と言いますが、人類全体の歴史からみれば所詮、小さな砂粒、ウタカタですね。何かを残したい、大きな事をやりたいと思っても、私のような凡人では何もできなかった訳ですが、それが人生なのかもしれません。そう言って、自らを納得させる所がまたまた凡人の極みなのでしょう。「あ~情けない」「情けない」の連呼から何も生まれないのであれば、またむしろ自らを鬱状態に追い込むのであれば、今、何ができるかを考えるしかありませんね。
「No Regret No Cry」
大した趣味もない中でできる事は、やはり仕事を通じて少しでも世のため人のためにお役に立つ事ぐらいしか自らの立ち位置を持つ事ができない事に思い至りました。今、ご縁があり公益社団法人日本アドバタイザーズ協会の専務理事と一般社団法人デジタル広告品質認証機構の代表理事を拝命しておりますが、今抱える広告の諸問題に対し少しでも解決の道を見出す事が「後悔」と「泣き」を少しでも減らす事となるかもしれない。そして、そうしたらこの世に生を与えて下さった神様か仏様にお返しができるのではないかと思います。
広告市場自体は7兆3千億円を超え、史上最高の市場となる中、「嫌われ者の広告」「広告ウザイ」「広告詐欺」とマイナスの評価を聞かない日がない程です。なぜそのようになったのか?様々な技術の発展(特にデジタル)や社会の変革に伴った一人一人の価値観の変化など複合的な要因があり、何が原因かと特定する事は出来ないと思います。
しかしながら、広告主、代理店さん、クリエイティブ、メディア、またポストプロダクション、そしてプロバイダー等々の様々なステイクホルダーの中での生態系の中に一つ大きな視点が欠けていたのではないかと考えるようになりました。
それは私自身を含む生活者の心の襞というものではないのでしょうか。様々に広がる広告の場、手段ではありますが、本来の広告の役割、公益性、共益性という事を今一度初心に帰り問い直せば何かの方向性が見えてくる気がしています。美味しい物を食べたり、予想外のお金を得たり、家族の笑顔で幸せな気持ちとなりますが、最も幸せを感じる時は「誰かのお役にたった時」「少しでも世の中のお役に立った時」だと思います。
当然、広告というものは正しい情報提供により購買行動を起こし、結果として多くの方々を幸せにするものであると同時に様々な注意喚起や課題を提起するものです。また、広告主にとっては当然売上拡大、そして利益拡大、お客様との絆作りといったエクスターナルな側面、また社内のモティベーションアップやリクルーティングといったインターナルな側面があるかと思います。
ただ、インターナル、エクスターナルな面双方において共通するのは、その広告によって「多くの方々がホッとする。暖かい気持ちになる」そして何よりも前を向いて行きたいと思っていただけるような勇気を与えるものでなければならないという事ではないでしょうか。
今、私が従事している仕事を通じて「何かほんの少しでも暖かい気持ち」「そして前向きな気持ち」を広告からくみ取って頂ければと思います。そのためには先ずは広告というもののミッション、パーパス、ある意味では定義を倫理観から始めて考えなおす事ができれば、また生活者を含む全ての広告に関与する方々の笑顔を考えてゆきたいと思います。
そうすれば、夜、眠りに落ちる時に後悔や泣きたい気持ちにならず、安らかに前向きな夢の世界に入れそうな気がします。「Golden Slumber」へまいりましょう。