寄稿


ローカルから、世界へ

吉田 けえな
コミュニケーター / コネクター

PR 会社や百貨店のコーディネーター、雑貨ブランドのディレクター兼バイヤーなどを経て渡米。NYを拠点に世界中で、見て、着て、食べた、リアルな視点を大事に、バイイングやリサーチを行う。現在は帰国し、情報収集能力を活かし、商業施設のプランニングアドバイスやポップアップショップの企画立案、ブランドプロデュース、内装プランニング、パーソナルスタイリングなど多岐にわたり、活動中。

 2000年問題で騒がれた、あの年越しから四半世紀が経ち、2025年が幕を開ける。2000年を思い返すと、ガラケー全盛期、インターネットはダイヤルアップ接続からブロードバンドへ切り替わり始めていた。この25年の間にテクノロジーは飛躍的に進化し、自動車の自動運転の実証実験が始まったり、インターネット環境が目覚ましい進化をみせたりする中で、スマホが普及し、人々の働き方や学び方が大きく変化した。それでは、今ここから25年先の未来を見据えた時、どんな未来がみえるのだろうか。2050年には10万人が宇宙旅行をするようになると言われており、かつて漫画で読んだ世界が極めて身近になってくる。
 おそらく社会はますます二極化し、コミュニティは細分化していくように感じる。テクノロジーが進化し、グローバル化するほどローカルに向かっていく人や、宇宙まで含めた世界へと拡張していく人。自分がどちらに目を向けていたいかというと、新しいものに常に興味がある一方、ローカルやリアルの面白さが際立つことも知っているので、両極を知った上で、それぞれの良さや面白さを伝えられる人間になりたいと考えている。
 またSNSの普及により、いわゆるマスメディアによる一方通行の情報伝達の時代が終わったことを、先日の兵庫県知事選挙やアメリカ大統領選挙の結果が物語っている。マスメディアがSNSにとって変わっただけではという議論は、ここでは一旦置いておくが、今後は双方向なコミュニケーションや、一つ一つの力は小さくても、いずれ渦のようになっていく大きな力は見逃せないだろう。誰が発信したか、ということや、ごく個人の力がますます必要不可欠になってくる。
 そんな波紋のような力の広がりで思い出すのは、先日、クラフトサケ界隈で注目を集める、稲とアガベ醸造所の代表である岡住氏の話を伺う機会があったのだが、彼は少子高齢化の進む秋田県男鹿市で2021年に酒造りをスタートし、今ではラーメン屋さんや宿泊施設も運営し、街づくりへの貢献は計り知れない。彼の活動に惹かれて、他県からの移住者や、閉館した有形文化財である旅館「森長旅館」に1.5億円を投じ、再生させる仲間が生まれている。そういった活動が少しずつ広がり、街に変化が生まれているのを見ると、可能性を感じてワクワクせざるを得ない。秋田県は、人口戦略会議が今年春に発表された報告書で、秋田市を除く24自治体が最終的に消滅する可能性が高い「消滅可能性自治体」と分析されている一方、岡住氏のように秋田に移住し、今が既に厳しい状態だからこそ、なんでもできるのではとプラスに考えられる若手経営者がいるのは非常に希望を感じる。
 岡住氏に限らず、日本中で未来に向けて挑戦している人は沢山いる。日本全体も正直、今、円安、物価高騰と厳しい時代だからこそ、新たな挑戦をしやすい時期なのかもしれない。私自身も今年は、国内外で楽しんで頑張る多くの人の話を少しずつ発信していけたらと思う。今の一歩が確実に未来の夢へと繋がっていると信じていきたい。今年は、そんなふうに自分を信じる年にしていきたい。