新しいしごととは何なのか?
正しさとは何なのか?
「新しいしごと」とは何か?
「新規事業の時代」と言っても言い過ぎではないかもしれないですね。多くの日本企業では、既存事業一本足打法に限界を感じ、新領域での挑戦や既存領域における事業拡張の挑戦が進められています。この「新しい仕事づくり」は、各社の次代を担うビジネスパーソン共通の課題と言えるでしょう。
ですが、この新しいチャレンジに取り組む「新規事業担当者」「新サービス開発者」のお顔を拝見すると、概ね暗い顔をしているなぁと感じています。そっと聞いてみると、「この事業企画は本当に儲かるのか?!」「こんなことやったことない!責任取れるのか?!」という上長や役員たちの声やプレッシャーがその背景にあることが少なくありません。
そこで私は改めて確認したいと思います。新規事業とはその名の通り「過去に経験をしたことがない事業」なのであり、新しい仕事とは「新しい時代をつくる実験」なのであり、そのような実験は担当者が「ワクワク」しながら進めることがとても重要だと思うわけです。
「正しさ」をアップデートする
私は、ビジネスパーソンの多くがこの「正しさ」という呪縛に囚われすぎていると感じています。もちろん個社の既存の事業は、過去のさまざまな実験を元に生み出され、結果しっかり収益を上げ、一つの「正しさ」としてアップデートしながら成長を遂げてきたわけです。
でも、今私たちが作らなければならないのは「新しい」ビジネスです。ワクワクする新たな価値や意味を持つ新商品やサービスを作ろうとしているにも関わらず、「過去の成功体験」や「過去の正解(判断基準)」を当てはめられてしまうことがとても多いようです。結果、新規事業担当者たちはとても暗い顔になっているのではないかと。
今私たちが取り組んでいることは「新しい正しい」をつくるためのチャレンジですよね。いつもお世話になっている慶應義塾大学の若新雄純さんもおっしゃっていました。「新しいは、だいたい怪しい」と。過去の正しさに囚われすぎることなく、新たな違和感のある学びと挑戦を繰り返しながら、自社独自の新規事業を企画し実装させていくことが求められているのだと思います。
事業企画の起点の置きどころ
企業のアイデア発想の起点
さて、新規事業や新商品・サービスを企画するときに、みなさんは何を起点に検討していますか?いろんな企業の傾向を見ていると、最近のアイデア発想の起点は、概ね以下の4つに大別できるのではないかと。
①自社の既存アセット起点:自社の持つ独自の要素技術や競争優位のある事業基盤を活用する事業企画、②創業の理念起点:「自社の掲げる創業の理念」と市場ニーズの接合点を見出す事業企画、③パーパス起点:「自社が創りたい未来の社会」を体現するための事業企画、そして④社会問題起点:社会問題解決型の事業企画。
この4つのどれか一つというわけではなく、組み合わせたりしながら、事業開発担当者の皆様は挑戦をしておられると思います。
①②③は自社にとっての正しさについて「これまで」そして「これから」という観点から紐解くアプローチと言えるかもしれません。一方、④の社会問題だけは、なんともアンコントロールなテーマですよね。僕はこの最も未知で怪しい領域に、新規事業発想の大きなポテンシャルを感じています。
「社会問題」をビジネス開発の中心においてみる
「ビジネスアイデアは【社会性】と【熱量】そして【独自の未来像】と【意外性との出会い】でつくられる」。そう私は考えています。近年、そしてこれから、強く求められている「社会性」という視点。
昨今のSDGsの席巻にも見られるように、ビジネスにおける経済性と社会性の両立が非常に重要であると。もっと平たく言えば、「社会問題解決型ビジネスでしっかりいっぱい稼いでいく!」という考えを体現していくことができれば、みんなが理想とする未来を生きることができると思うわけです。
「新しいしごとの作り方」をアップデートしていくという点においても、この社会問題起点からの事業構想にはとても可能性を感じています。これまでの「Product Out」や「Market In」のアイデア発想ではなく、社会問題や社会動向というもう一つ高いレイヤーから「Social In」というコンセプトでビジネスを画策する。
SDGs/CSV時代の到来に合わせて、私たちのビジネスの作り方もどんどん多様化していくのでしょう。
『社会性』と『経済性』の両立
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事業による
社会課題の解決
日本企業における社会問題解決型ビジネス創発の実態
こうした社会問題解決型ビジネスはすでに多く日本企業から生み出されてきています。一方、このビジネスづくりに関心を持つ企業からは、ちょっと意外な調査結果が出てきました。2023年5月に実施した調査です。「47.5%が、商品/サービス開発に未着手/不安感」「表層的な取り組みに終始。自社の強みと未接続」「社会問題が曖昧。他社と足並みを揃える程度」「60%が、企画化・事業化にノウハウ不足」「75%の企業が「経営からの短期的な収益圧力」で萎縮」といった課題認識を主にあげられています。SDGsがこれだけ声高に叫ばれている日本においても、多くの企業がそれぞれのお悩みや課題認識をお持ちなのですね。
次号では、こうした悩みを持つ企業の皆様と、この「社会問題解決型ビジネスを生み出していくためのヒント」について一緒に考えられればと思います。
戒田 信賢
株式会社電通strategist