巻頭言
上から見下す「上から目線」ではなく、下から見上げる「下から目線」でもなく、今回は「下目線」というテーマで企画しました。
ここで言う「下目線」とは、普段の目線の高さや範囲から目線を下げることによって、「私たちの足元を見つめ直し、そこに広がる唯一無二の存在に気づき、価値を見出す力を養う目線」と定義したいと考えます。
また、「下」にはよく目を凝らさないと見えないもの、五感を生かして想像しないと“見えないもの”も含まれます。下目線を持つことで、世界は拓かれ、既知だと思っていたことが未知に様変わりする驚きと喜びを、本号を通じて共有できればとても嬉しく思います。
今回、5組の方々に取材·執筆のご協力をいただきました。砂浜美術館 塩崎様 大迫様、みなとラボ 田口様、ヤマカワ コピーライター 川原様、BISTRO下水道 加藤様、そして立教大学スポーツウエルネス学部 准教授 兼 生物インタープレナー 奇二様。
お一人おひとりが情熱に溢れ、そしてやさしくも力強い目線でそれぞれのお立場から美しい持続可能な未来を見据えていらっしゃったのがとても印象的でした。人間が支配する世界ではなく、自然の循環サイクルの中で人間が生かされているこの世界で、本当の豊かさとはどんなことなのか。そして私たち一人ひとりに血が通い、ぬくもりある生き物であること。喜怒哀楽を感じる人間であるという、当たり前なことなのに忘れてしまいがちな大切な気づきを得る貴重な機会をいただきました。
近年、SDGsだけでなくネイチャーポジティブ経営(2030年までに自然の損失を止めて上向きに転じること)が重要課題とされ、2023年9月には「TNFD(Taskforce on Nature-related Financial Disclosures、自然関連財務情報開示タスクフォース)」の最終提言が公開され、各組織で開示対応が進んでいます。
「今、ここ(=地球、この時代)を生きる」私たちにとって大切なことは何か。そして、どう行動に移すのか。みなさまとご一緒に考え、明日をつくるマーケティング活動に活かすことができれば幸いです。
本誌編集委員 蛭子 彩華