前回は、売上が横ばいの中で「Who」を見直し、ターゲットカスタマーを設定していったSIXPADの取り組みを伺いました。今回は、そのお客様にどのようにアプローチし、認知から購買、継続へつなげていくのか。「How」の部分を掘り下げます。
石谷さん SIXPADは、見ただけでは何の商品なのか分かりにくいものもあります。認知してもらってから、「どうやって使うのか」「本当に効くのか」「他のものと比べてどうなのか」「試してみたい」といった段階を経て、体験、購買へ進んでいく。認知から共感、啓蒙、体験、購買までが長いので、そこを丁寧に設計しないといけないと考えています。
商品を知ってもらうだけではなく、購入に至るまでの一連の流れを設計することが、SIXPADの「How」を考えるうえで重要なポイントになっています。
プロフィール:石谷 桂子(いしたに・けいこ)
P&Gで約25年間、マーケティングを中心にブランドビジネスに携わり、価格戦略や製品戦略を含めた事業づくりを経験。その後2社を経て、ウェルネス・ヘルスケア領域で事業責任者として仕事をしたいという思いから株式会社MTGへ入社。現在はSIXPADやStyleなどのウェルネス事業を担い、EMSのテクノロジーを通じた健康寿命やQOL(クオリティ・オブ・ライフ)の向上につながる価値創造に取り組んでいる

エビデンスと「使い続けてもらう」設計
SIXPADでは、製品の安全性や効果についてエビデンスを積み重ねることに加えて、購入後に使い続けてもらうための設計も重視しています。
為末さん 実際に効くかは試さない限り理解しづらい部分もあると思いますが、伝え方ではどのような工夫をされていますか。
石谷さん きちんとした製品であること、安全性も含めてエビデンスがあることを、しっかり伝えるようにしています。一方で、1回、2回使って「効かなかった」と言われても、それだけで判断できるものではありません。2か月使い続けていただくための工夫としてアプリを活用し、それが最終的に口コミにつながっていくところまで、設計として意識するようになりました。
エビデンスを示すことと、継続して使える環境をつくること。その両方をつなげて考えている点が特徴です。
医師との接点が信頼につながる
エビデンスを積み重ねてきたことは、医療の現場との接点にもつながっています。
鈴木さん エビデンスを重視すると、一般の方には少し難しく感じられることもあると思います。その難しさはありませんか。
石谷さん ありました。ただ、本物であるためにはエビデンスを取り続けるという考えで続けてきました。私が来た時ぐらいから、お医者様から「SIXPADを研究に使いたい」「臨床で使った結果を発表していいか」といった問い合わせが増えてきたんです。エビデンスがあるからこそ、医師の方にも使い始めていただけたのだと思います。今は、お医者様に使っていただいて、勧めてもらう方向にも転換しています。
鈴木さん お世話になっている先生に勧められたら、使ってみようかなと思いますよね。
専門的な情報をそのまま届けるだけではなく、信頼できる第三者との接点も含めて伝え方を設計しています。

「しまい込まない」ために、アプリを製品の一部にする
SIXPADでは、購入した製品を使い続けてもらうために、デザインやアプリも重要な要素として捉えています。
石谷さん とにかくこだわるのがデザインです。見た目もかっこよくして、使う方たちがしまい込まないようにしたいんです。
鈴木さん 「しまい込まれないようにする」というのは大きなポイントですよね。機器を売るためだけではなく、機器を入口としてウェルネスを提供したいということだと思います。使い続けてもらうために、御社でもサービス化に向けた取り組みはありますか。
石谷さん アプリは製品の一部だと思っています。Bluetoothでコントロールできて、トレーニングの記録も残ります。ラジオ体操のスタンプのように、回数が見えることがモチベーションになるんです。新製品や買い替えの情報も出していますし、Foot Fitでは、プレゼントした側と使う側がつながる応援機能のような仕組みもあります。
製品を購入して終わりにせず、使い続けやすい体験まで含めて設計しています。
購買後の「継続」を起点に、ジャーニーを循環させる
アプリは、記録機能から始まり、使い続けてもらうためのサービスへと役割を広げてきました。
為末さん アプリはどのような経緯で開発されたんですか。
石谷さん 一番最初は製品の一部として記録ができるものでした。その後、コロナ禍でホームジムを始め、オンラインジムにも展開しました。そこから、やはり一番大事なのは続けてもらうことだと考えて、購買していただいた方が継続できるものへ転換しました。離脱率も減って、続けた効果につながっていると思います。
購買で終わらず、その先の継続、できれば推奨までつなげ、それがまた認知につながる。一本のジャーニーをサークルにしていきたいという考えです。

ターゲットに合わせて、新聞・テレビも使う
認知を広げるための媒体選びも、ターゲットとなるお客様に合わせて考えています。
石谷さん テレビだけで購買に至らないことは分かっていますが、「こういうものがある」と伝える活動は必要だと思っています。Whoが50代、60代、70代の方だったりすると、完全なデジタルネイティブではないので、新聞・テレビもまだ使っています。
鈴木さん 新聞やテレビといった四大媒体は、もう時代ではないと言われることもありますが、まだまだですよね。
デジタルだけに寄せるのではなく、「誰に届けるのか」というWhoに合わせてHowを選ぶことが、媒体設計にも表れています。
商品ではなく、ブランドで価値を届ける
最後に語られたのは、商品単体ではなく、ブランドとして健康・ウェルネスを届けるという考え方です。
鈴木さん まさにWhoとHowをつなげて考えるということですよね。商品ではなく、ブランドで健康・ウェルネスを提供することには、何か違いがありますか。
石谷さん ブランドというのは価値提供だと思います。特に体験価値もあると思うんです。同じテクノロジーや同じ製品を提供していたとしても、そこにあるストーリーや思いによって、お客様が買い続けてくださったり、使い続けてくださったりする。単に一製品を提供しているだけだと、そこで終わってしまって、その製品以上の広がりが出にくいのではないかと思います。認知、体験、購買、継続というHowの設計を、ブランドの価値提供までつなげて考えることが、SIXPADの取り組みから見えてきます。
