マーケティングの本質を多彩なゲストとの対話から紐解く『マーケティングホライズン』。今回のテーマはSIXPADです。ゲストは、株式会社MTGでWELLNESS事業本部を率い、SIXPADとStyleの事業を担う石谷恵子さん。P&Gで長年ブランドビジネスに携わってきた石谷さんは、マーケティングを「経営思想そのもの」と捉えています。誰をターゲットにし、どのような価値を提供し、それをどう届けるのか。今回は、石谷さんが事業責任者としてSIXPADに関わるまでの背景と、EMSというテクノロジーを通じて健康寿命やクオリティ・オブ・ライフに貢献する製品づくりについて伺います。
プロフィール:石谷 桂子(いしたに・けいこ)
P&Gで約25年間、マーケティングを中心にブランドビジネスに携わり、価格戦略や製品戦略を含めた事業づくりを経験。その後2社を経て、ウェルネス・ヘルスケア領域で事業責任者として仕事をしたいという思いから株式会社MTGへ入社。現在はSIXPADやStyleなどのウェルネス事業を担い、EMSのテクノロジーを通じた健康寿命やQOL(クオリティ・オブ・ライフ)の向上につながる価値創造に取り組んでいる

ブランドを育てるためのマーケティング
P&Gで長くブランドビジネスに携わってきた石谷さん。そこで培われたマーケティングの考え方について伺います。
為末さん P&Gで培われるマーケティングの考え方には、どのような特徴があるのでしょうか。
石谷さん ブランドの考え方を早くから提唱し、導入してきた会社の一つがP&Gです。マーケティングの重要性がマーケティングの部署だけではなく全組織に行き渡っていて、ブランドをきちんと育成するためにマーケティングを使っていくという考え方が染み付いている会社だと思います。
石谷さん自身も「P&Gには育てていただいた」と振り返ります。ブランドを育成するための考え方を組織の中で学び、実践してきた経験が、その後の事業づくりにもつながっています。
SIXPADへの転職で求めた「事業を担う」仕事
P&Gを離れた後、石谷さんは2つの会社を経験しました。その中で改めて感じたのが、事業全体に関わる仕事への思いでした。
為末さん なぜSIXPADに転職されたのでしょうか。
石谷さん P&Gでは、事業として売上を作るための価格戦略や製品戦略、マーケティングの思考まで、責任を持って見る形で仕事をしていました。その後の会社では販促を中心とした責任範囲が多く、改めて「次は事業をやりたい」と思ったんです。さらに、超高齢社会を迎える日本で、社会に役立つビジネスに関わりたいという思いもありました。ウェルネスやヘルスケアなどの領域で事業責任者の仕事を考えていた時に紹介されたのがMTGでした。SIXPADと聞いた時にはスポーツ領域のイメージがありましたが、テクノロジーをウェルネス領域にも製品化したいという話を伺い、ぜひ話を聞いてみたいと思いました。

SIXPADへの転職で求めた「事業を担う」仕事
MTGの話を聞く中で、石谷さんが惹かれたのは、ブランドを通じて価値を提供したいという会社と社長の考え方でした。
鈴木さん どのようなところに惹かれましたか?
石谷さん MTGには大義がすごくあるんです。社長は「バイタルライフ」という、本当に生き生きとした人生を皆さんに提供したい、そのためにブランドを作り、ブランドを通して価値を提供したいという思いを強く持っていました。
石谷さん自身も、健康に関わるビジネスへの関心を以前から持っていました。P&Gでペットフード事業を担当した際、飼育の仕方によって健康や寿命が大きく変わることを実感したことが、そのきっかけの一つだったといいます。高齢社会の中で、自分自身も年齢を重ねていく。その中で健康に関わるビジネスに携わりたいという思いと、MTGが掲げる大義が重なっていきました。
マーケティングは「経営思想そのもの」
石谷さんが事業責任者として仕事をしたいと考えた背景には、マーケティングを広告や販促だけではなく、事業全体を考えるものとして捉えていることがあります。
為末さん 事業責任者だからこそできることには、どのようなものがありますか?
石谷さん 広告担当者であれば、作品を作ってメディアで流すことに注力することもあります。一方で、ビジネスモデルによってはテレビ広告ではなく、施設などでマーケティングをした方がいい場合もあります。本当にビジネスを伸ばそうと思った時に、どこに力をかけるのがいいのかを経営的に判断したいという思いがありました。
そして、石谷さんは自身のマーケティング観をこう語ります。
石谷さん 私は、マーケティングというのは経営思想そのものだと思っています。誰をターゲットにして、どういう人に買ってほしくて、何を価値として提供するのか。それをどうやって実現していくのか。そのやり方がマーケティングだと思っています。
鈴木さん まさに価値創造の考え方そのものですよね。

EMSで歩くために必要な筋肉を鍛える
対談では、為末さんがFoot Fitを実際に体験しながら、EMSの仕組みについて話が進みました。
石谷さん Foot Fitは15分のオートプログラムで、筋肉を鍛える部分と少し緩める部分など、緩急をつけながら動くようになっています。
為末さん 足の裏だけかと思ったら、膝の下ぐらいまでくるんですね。
石谷さん 電気が通電して、ふくらはぎ、前すね、足の裏を鍛えます。歩くために必要なのが、足裏やすねといった筋肉です。
EMSは「Electrical Muscle Stimulation」の略で、筋電気刺激を指します。通常、筋肉は脳からの指令によって動きますが、EMSでは筋肉に電気刺激を与えることで筋肉を動かします。
石谷さん 怪我をした後の方や高齢者、女性など、負荷にあまり強くない方にも適しているというのが、このテクノロジーの良さです。

製品化で徹底してきた「エビデンス」
EMSというテクノロジーを商品として届ける際、SIXPADがこだわってきたものの一つが「エビデンス」です。
鈴木さん そのテクノロジーをいろいろな方に届けるために商品化する時、こだわっているところはありますか?
石谷さん EMSにはダイエット用製品というイメージもあった中で、「きちんと鍛えられる」ということに徹底してこだわりました。EMSの権威の先生にお願いして一緒に研究し、その分、徹底的にエビデンスを取り、国際論文に出すことにも取り組んできました。
製品化の際には、本当に筋肉を鍛えられているのかを確認し、それを論文化する。さまざまな施設や教育機関、病院などと研究を重ね、石谷さんによると、この10年間で国際論文も40以上発表してきたといいます。技術を製品にするだけではなく、その働きを確かめ、積み重ねていくことがSIXPADの商品づくりを支えています。

健康寿命と「バイタルライフ」を支える製品づくり
SIXPADの製品づくりの先にあるのが、MTGが掲げる「バイタルライフ」という考え方です。
石谷さん 高齢社会で年齢的な寿命は延びていますが、健康寿命を延ばし、生き生きとした人生を送っていただきたい。そこに貢献する製品やサービスを届けたいという大義に私自身も共感しています。そこに尽きるような製品づくりをしています。
Foot Fitは筋肉を鍛えるトレーニング製品ですが、石谷さんは、お客様相談室に寄せられる声を通して、製品が日々の生活に与える価値も感じているといいます。
石谷さん どれだけクオリティ・オブ・ライフを上げられるかというところが、健康で長生きすることの大義ではないかと思います。
鈴木先生も、自分の足で歩き、自分で動けることは人にとって大切な幸せの一つだと語ります。運動はコミュニティや食事ともつながるからこそ、筋肉を鍛えることを手軽に続けられる価値に注目しました。
SIXPADから見える「価値創造」のマーケティング
今回の対談では、石谷さんが培ってきたブランドビジネスの経験と、SIXPADで取り組むウェルネス事業について伺いました。誰をターゲットにし、どのような価値を提供し、それをどう届けるのか。石谷さんが「経営思想そのもの」と表現するマーケティングは、広告や販促だけではなく、価格や製品、届け方まで含めて事業を考える視点につながっています。SIXPADでは、EMSというテクノロジーについてエビデンスを積み重ねながら、健康寿命を延ばし、生き生きとした人生を送ってもらう「バイタルライフ」という大義に沿った製品づくりを進めています。ブランドを通じてどのような価値を提供するのか。その問いを事業全体で考えていく姿勢から、価値創造としてのマーケティングが見えてきます。