本荘 修二
本荘事務所 代表
新春提言
未來をつくるイニシアティブとして、自分の専門であるアントレプレナーシップでは、グローバルとシニアが挙げられます。また、個人的な視点では、親になるためのスクールが一つのテーマです。
グローバル・アントレプレナーシップ
政府・自治体や経済団体などが声高にスタートアップ!と唱えています。これをライフワークとして40年近く伴走してきた筆者からすると、これまでのベンチャー冷や飯時代とは隔世の感があり、良いことだと思います。しかし、今ごろ感は免れず、発想は古く国内に偏っています。
そこで、視野をグローバルに転じること、日本から海外に出ることの啓蒙・支援にさらに力を入れる所存です。これまでも、日本のスタートアップ・エコシステムではマイノリティである国際派として、海外のベンチャーキャピタルやインキュベーターなどとつながり、彼らや彼らが支援する日本・海外のスタートアップをサポートしてきました。
日本はもはやかつての勢いはなく、規制も新事業フレンドリーでなく、市場としての魅力が衰えています。さらに、スタートアップを育むエコシステムは先進国のはるか後塵を拝しています。
そして、日本の起業家が毎週Web3スタートアップを海外で起こしている現実があります。既に、若き起業家たちは、視野をグローバルに転じ始めています。
もちろん国内のスタートアップ・新事業の応援団は継続しますが、今こそグローバルの機運と行動を加速していきます。
注:詳しくは、『マーケティングホライズン』2022年10号(特集 日本が逃す新事業 〜スタートアップ戦略こそグローバルに〜)をご覧下さい。
シニア・アントレプレナーシップ
起業家というと若い人を連想する方が多いでしょうが、実際には50歳以上の起業家が2012年は男性で5割を超え(51.8%)、女性も1/3を超え(35.3%)て、さらに比率が高まる見込みです(1979年では男性23.7%、女性15.0%)。
出所:中小企業庁/過去1年間に職を変えた又は新たに職についた者のうち、現在は会社等の役員又は自営業主となっている者を起業家と定義(兼業・副業の起業家は含まれない)。
政府もユニコーン(企業価値10億ドル=千数百億円を超えるスタートアップ)に目が行っています。小さな規模の起業に意味があるのかという見方をする記者も少なくありません。
しかし、東京都は起業10倍を掲げていますが、シニア起業を振興せずに達成は難しいでしょう。欧米など起業先進国では、スモールビジネスの研究や支援は昔から熱心です。また、書籍『ライフ・シフト』が注目されましたが、人生100年時代に向かい、シニアの起業は重要なテーマです。
起業に冷ややかな日本の環境では経営的な視点での啓蒙・教育が大切ですが、同時に、自分の心を置き去りにせず、充実した人生をかなえ、他の人々を幸せにし、自らの幸せを実現する、「ライフ」の視点が尊ばれます。すなわち、シニア起業に適した教育・サポートが求められます。筆者は、ライフシフト大学での講師を始め、この分野にも取り組みます。
親になるためのスクール
50歳で父親になり、あげるとキリがない位、多くの問題を感じます。日本の子育て環境は改善余地だらけですが、男性の関心は薄く、女性でも年長者を始め保守的志向の方は少なくないようです。なお、既に『マーケティングホライズン』2021年9号(特集 子どもドリブン)でこれらの一部を発信しました。関心が薄い方でも、例えば少子化に有効策が打てない現実、危機であることは認識していることでしょう。
これらについて、政府などに働きかけ社会を変えようとするオピニオンリーダーの方々も、数は足りませんが、いらっしゃいます。筆者も応援や発信を続けます。
その一方で、こうした社会・環境でどう生きるか、つまり世の中をよりよくする取り組みだけでなく、自分たちが幸せに生きるための啓蒙・教育や助け合う仕組みが欲しいところです。
まだコンセプトに過ぎませんが筆者は、「親になるためのスクール」というアイデアを持っています。これは単なる子育て学級ではなく、第一にパートナーとの関係、家庭のつくり方、そして個人の生き方など、基本を重視します。第二にサイエンスと人間学などの知。迷信や誤った方法論がまかり通っていますが、正しい知識とそれを継続して得る術が大切です。第三に経営的アプローチ。チームワークや資源配分、トレードオフ、そして戦略的な視点が欠けている家庭に、マネジメント・スキルを応用します。第四に子どもと社会との付き合い方。親と子どものリレーション、生き方・進路などへの関わり方、そして子どもを取り巻く社会をどう理解し判断・選択するか、第一〜三を踏まえて学びます。第五にコミュニティ。社会が変化しママが孤立しがちであり、学び合い教え合う仲間、人のつながりが役に立つでしょう。
女性だけでなく男性/パートナーが参加するカップル受講が理想ですが、現実的には個人での受講も受け入れながら、男性に響くアプローチを模索するかと。子どもを持つ前、さらにパートナーが決まる前の若い年代からの受講が望ましいですが、初期は柔軟に対応するでしょう。
また、先生対生徒という旧来の形式を超えて、教え合う、教えたい卒業生・経験者が教えるといったコミュニティでの相互学習を活かします。コミュニティの質を上げるべく受講者選抜はしっかり、しかし受講料金を低廉にしたいです。
子育ては、様々な情報や意見が混在し、迷いや過ちが絶えません。しかも、子育てし難いことで、日本は先進国では頭抜けているともいわれます。学校教育・受験の仕組みと関係者のビヘイビアに、歪みや戸惑う点もあります。子どもに問題があるとき、ほとんどは親に問題があると指摘する専門家もいます。タフな現実の中で、家庭とメンバーを進歩させ、幸せに生きる道を見失いがちです。それを乗り越えるためのスクールの必要性を感じています。
ご意見・アドバイス・アイデア他のある方は、ご連絡をいただければ幸いです。
本荘 修二
本荘事務所 代表
新事業を中心に、経営コンサルティングを手掛ける。日米アジアの大企業、スタートアップ、投資会社などのアドバイザーや社外役員を務める。500 Global、Endeavor、始動ネクストイノベーター、福岡県他のメンターを務め、起業家育成、エコシステムづくりに取り組む。厚生労働省・医療系ベンチャー振興推進会議座長。著書に『大企業のwebはなぜつまらないのか?』『エコシステム・マーケティング』他、訳書に『ザッポス伝説』他、連載に「垣根を越える力」等がある。