
『GPUクラスタ×生成AI
13のポイントで実現する次世代基盤とビジュアライゼーション実践ガイド』
大野 泰弘、力石 誠也、NTTPCコミュニケーションズ 著 NTT出版
近年のChatGPTをはじめとする生成AIの急速な普及に伴い、AIを “使う” ことは誰にでも可能な時代になった。だが、それを“使える状態にする”ための基盤づくりには、依然として高い専門性が求められる。そんな生成AIを裏から支えるGPUクラスタ基盤の構築と実運用に焦点を当てた実務書が本書である。
書名にある「13のポイント」とは、第2章で紹介される実践的な指針であり、GPUクラスタ構築を検討するうえでの必須項目が網羅されている。本書で何度も触れられる「GPUクラスタの構築は“総合格闘技”である」というたとえのとおり、さまざまなスキルが必要とされることが示され、構築後の持続的な運用に関するヒントやノウハウについても言及している。
また第3章では、GPUクラスタを用いた、ビジュアライゼーションとして、NTTPCの「VDIクラウド for デジタルツイン」に結実する、NVIDIAの「Omniverse」の構築ポイントやVDI技術に関する知見について、第4章では著者2名による対談にて、技術のみにとどまらない「フルスタックエンジニアリング」の重要性が語られている。ここでいうフルスタックエンジニアリングとは、エンジニア、プロジェクトマネージャー、セールスなどのスキルを備え、過程をきちんと計画できる総合的な力をもった人材、能力のこと
2人は「高性能なGPUクラスタを作っただけでは意味がない。それを業務の中で『当たり前に使える』ようにするには、どれほどの配慮と調整が必要か」と語る。そのために、いかにフルスタックエンジニアリングが重要性であるのか、現場のリアルな意見が展開されている点も印象深い。
生成AIの社会実装を「研究開発」から「事業化」へとシフトさせる際に問われるのが、「社会インフラとしての設計力」である。多くの企業がクラウドや大規模計算リソースを導入しながらも、その先の持続的な運用・拡張・可視化に苦戦している現状に、本書は大きな示唆を与えるだろう。
AI時代に不可欠な“GPUクラスタ”技術をどのようにビジネスに展開していくかに関心を持つ人に、ぜひ手に取ってほしい。
Recommended by 植草 健次郎
エヌ・ティ・ティ出版株式会社