巻頭言
新時代のコミュニケーション戦略とは
2021年にコーポレートガバナンス・コードが大幅に改定されました。それにより、企業の資本市場への向き合い方が変化し、コミュニケーションの考え方や手法も変わりつつあります。
市場に受け入れられるためには、IR(Investor Relations=株主や投資家に対する広報活動)やSR(Shareholder Relations=株主と良好な関係を築くための活動)の観点が必要とされ、企業は、ESG(環境・社会・ガバナンス)や社会的意義をエクイティストーリーで語ること(パーパス経営)が求められています。また、将来にわたっての企業の在り方を発信する考え方も提案されています。
一方で、SNS等により消費者からの評価が企業価値へ大きく影響するようになり、広くパーパス経営を示し、社会へのコミットメントを明確にすることが重要になっています。これまで、企業から消費者に対してのコミュニケーションは、商品やサービスのマーケティングに注力していましたが、それに加えて、オウンドメディアを活用するなど、消費者にパーパス経営の姿をアピールすることも求められてきています。
そこで、本号では、コーポレートガバナンス改定後に求められるコミュニケーションに着目し、①経営者の目線、②IR活動を第三者的に監視している専門家の目線、③企業の広報/IR担当目線と、3つの目線でインタビューした内容をお届けします。
読者の皆様と、新時代のコミュニケーションについて考えていければと思います。
参考情報
コーポレートガバナンスの変遷と
2021年改定のポイントについて
◆2021年「コーポレートガバナンス・コード」改定のポイント
〇東証プライム上場企業において、独立社外取締役を1/3以上選任(必要な場合には、過半数の選任の検討)
〇指名委員会・報酬委員会の設置(東証プライム上場企業は独立社外取締役を委員会の過半数選任)
〇スキルマトリックスの公表
〇他社での経営経験を有する経営人材の独立社外取締役への選任
〇管理職における多様性(女性、外国人、中途採用者の登用)の確保
〇東証プライム上場企業において、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)又はそれと同等の国際的枠組みに基づく気候変動開示の質と量を充実
〇東証プライムに上場する「子会社」において、独立社外取締役を過半数選任又は利益相反、管理のための委員会の設置
本誌編集委員 德田 治子