そこにいながらにして
「今やっている」ことに忙しい人たち

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 さまざまなソースからZ世代を見てきた。スマホネイティブであるZ世代の特徴といわれている、つながり重視、環境意識や社会貢献意識の高さ等々は確かにその通りではあるが、Z世代全体から見れば世代の11%の人たちの特徴でもあった(参照図へリンク)。
 一方で4割を超える価値観クラスター名「無気力あきらめ派」(同)に属する人たちがいる。各世代に共通する価値観クラスターとして汎用性が高いクラスター名となっているが、Z世代を研究していく際にはこのクラスター名を額面通りに受けとってはいけない。まるっきり無気力なわけではなく、また何もかもをあきらめているわけでもないことは、特集1.の高橋寿夫氏も言及の通りである。
 このクラスターの興味深い点は社会問題に対する認知項目数が世代平均より多いことに表れている(11、12ページ)。スマホを片手にじっとしながらも大量の情報を蓄えことはやめない様が目に浮かぶ。とりあえずいろいろな情報を入れながら、いかに失敗を避け、損する道を選ばず、労力を掛けずに実を得るかを考えている。彼ら彼女らの頭の中の忙しさを想像すると、それは別に無気力でもないし、あきらめでもないだろう。
 「今やろうと思っていたのに」という台詞は昔から急かされたときの定番だが、これからは「今やっている」に置き換わっていく。外から見ただけでは行動しているかどうかわからない行動が、Z世代を筆頭に既に年代職業を問わず増えている。ソファでじっとしているように見えても、その実、自国ではないデモに参加し、他では売っていない自分にとっての特別なものをみつけ、困っている人を助け、いつものように授業を受け、バイトをして、寄付をして、友だちと待ち合わせをして、仮想空間内で会う。そこではリアルにおける関係性とは異なる関係性が育まれているかもしれない。
 第三者に見えている姿と当人が行っている行動が一致しない未来が既に来ている。そこでの「わたし」と、ソファに座っている「わたし」は同じであって、違う「わたし」でもある。
世界はまさに一寸先は闇。日本の、そして世界のZ世代、そしてそれに続くα世代は何を選択していくのだろう。いずれにしても、今までとはまったく異なる意識とやり方でこれからの社会をつくっていくのだろう。まさにルールが変わっていく時だ。

本誌編集委員長 ツノダ フミコ