by 説田 佳奈子
株式会社電通 電通若者研究部
最近の映画やドラマを見ていても、家族や恋愛の多様化が描かれているものが増えてきました。
本記事では、未来に一番近い人たちであるZ世代の価値観やインサイトを見つめ、家族や恋愛のカタチの変化を考えていきます。
多様化が進む、家族のカタチ
かつては、一流大学への進学や一流企業就職、結婚など、 “みんなが目指す共通の目標”があり、頑張れば報われる時代でした。
一方で、今は、未曽有の自然災害やコロナ禍、目まぐるしく変化する世界情勢など、予測できない未来=正解のない時代と言われています。
個人個人が自己判断で自分なりの正解を選びとる。“みんな違って当たり前”という価値観がベースにあるため、家族観も多様化が進んでいると感じています。
家族とは、深い関係を築いている人の呼称
電通若者研究部が2021年に実施した調査によると、若い世代ほど「家族=血がつながった人」という固定観念が崩れつつあることがわかります(図1)。
家族とは、自分と深い関係を築いている人の「呼び名」であり、そこに血縁関係は必須ではなくなってきているのです。では、家族には、いったいどのような要素が必要なのでしょうか。
図1/ Q「家族」とは必ずしも’血縁’があるかではなく、
自分と趣味嗜好・価値観が共有できて大切にしたい相手は「家族」と呼んでも良いと思う
「価値観が合うか」という軸で、人間関係を築いていくZ世代
「スマホネイティブ」と呼ばれているZ世代。名前も顔も知らない相手とSNSやオンラインゲーム上でつながり、意気投合することも珍しくはありません。「もともとInstagramやLINEグループで“なんとなく知っている人”から、友人関係に発展することも多い」と語る高校生もいます。
デジタル起点で人間関係が生まれることが当たり前という感覚を持つZ世代にとって、出会い方はあまり重要ではなく、趣味や価値観などの共感軸でつながることをとても大切にしています。
それは、「家族」という存在においても同様で、若い世代ほど、共同生活を送る相手にも「自分が共感できるか」という軸で相手を見つめ、関係を深めるかを決める傾向が高いことがわかります(図2)。
形態や構成にとらわれず、誰とでも家族のような関係を築ける時代に向かっている中、Z世代の恋愛観はどのようになっているのでしょうか。
図2/ Q.目的や趣味・価値観が合えば、
一緒に生活を送ってもよい/送りたいと思う
恋愛はしたい若者たち
「若者の恋愛離れ」とはよく耳にしますが、電通若者研究部の調査では「恋愛はしたい」と回答した人は6割を超えています(図3)。
しかし、現在付き合っている人の有無を聞いたところ、「いない」と回答した人は7割近く(図4)。
恋愛はしたいが、付き合っている相手はいない。
そこには、「所属コミュニティに迷惑をかけてしまうのでは」という気持ちのハードルが存在している場合があります。
図3 /Q.【A】恋愛はしたい 【B】恋愛はしたくない
図4/ Q.【A】今現在、彼氏・彼女がいる 【B】今現在、彼氏・彼女がいない
恋愛はリスク? 大事なのは自分の恋愛よりも、所属コミュニティ
前述のとおり、価値観ベースで人間関係を築いているため、「性別関係なく仲が良い」が当たり前のZ世代。
“友だち”から一歩踏み出したくても、「もし告白が失敗したら」「別れてしまったら」と、所属コミュニティで築いたこれまでの関係性を、一発で壊してしまうリスクが存在します。
マッチングアプリの利用が拡大しつつあるのも、内輪での気軽なトライ&エラーができないという背景も影響しているかもしれません。
恋愛には、「する恋」と「見る恋」がある
では、Z世代はどのようにして恋愛のドキドキ・ワクワクを得ているのでしょうか。
実はZ世代にとっての恋愛とは「する恋」と「見る恋」に分けられます。「する恋」とは、自分自身が相手と恋愛関係を結んで進めていく恋。自分と価値観が合うかという軸で相手を選び、親友みたいな存在を恋人に求める傾向が強いです。
一方、「見る恋」とは、「する恋」で得られない“きゅん要素”を補う恋のカタチです。
Z世代を中心に、恋愛リアリティショーやカップルが投稿するSNS、YouTube、TikTokなどがとても人気ですが、これらのコンテンツを通して、若者は恋愛のドキドキ・ワクワク感を得ているのです。
固定観念がないZ世代
かつての若者といえば、恋愛を一番楽しんでいる時期、若者ならば「恋人がいて当たり前」というイメージでしたが、今の時代、恋人がいるのが当たり前とは限りません。選択肢の幅が広がり、恋愛しなくても結婚しなくても良い。いつ結婚したって良い。結婚しても子どもを持たなくても良い。血縁関係がなくても家族と呼んで良い。
固定概念がなく、自分起点で人生の在り方を選択するZ世代。彼らを見つめることで、半歩先の未来の兆しが掴めると感じています。
◆調査概要
電通若者研究部「若者まるわかり調査2021」
エリア/全国 実施年/2021年12月
サンプル数/高校生n=254、大学生n=596、
20代社会人n=550、10代n=694、
20代n=1,477、30代n=1,703、
40代n=2,215、50代n=2,013、
60代n=1,898 (図1~図4共通)
説田 佳奈子(せった かなこ)
株式会社電通 電通若者研究部
2014年入社。化粧品、食品、流通、BtoB企業などのマーケティング、コミュニケーション戦略立案の経験を経て、現在は経営・事業コンサルティング業務に従事。
電通若者研究部を兼務し、主に10~20代の若年層を対象とした若年層のインサイト研究員としても活動中。
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