巻頭言
2020年にはじまったパンデミックにより海外渡航や移動の自粛が求められたことで、ごく身近な部分に目を向ける機会が増え、あらためて、その素晴らしさに気がついた人も多いだろう。私は身の回りの半径3メートルほどの世界にフォーカスし、その上で、5年後、10年後、50年後、100年後といった遠くの視座を持つことの重要性を学んだ。この期間に生まれた新たな視点やマインドの変化は、今後、素晴らしい未来に繋がる可能性を秘めている、そんなふうに感じる。
今号で取材したSANUは、2nd Homeというコンセプトで、サブスクリプションで白樺湖、八ヶ岳、山中湖などのキャビンを拠点に宿泊サービスを提供している。企画から約1ヶ月でローンチという驚きのスピードについて「旅を消費する感覚に戻ってしまう前に、楔を打つ必要を感じた」とファウンダーの本間氏。SANUを通じた旅ではこれまでの旅とは違う、日常の延長で味わう良さを知り、これは私の旅や生活スタイルに影響を与えた。「飛行機を飛ばしながら作っている感覚」と語る彼らのスピード感は、今の日本社会には必要なパワーだ。また、多くの人に内と向き合う時間が生まれたパンデミック。日本ではウコンと聞くとアルコール摂取とセットのイメージが強いと思うが、お酒を飲まない方にもオススメのウコン飲料を展開する合同会社一一(かずいち)の二人は、外に広げるよりも、内に向かって研究、深掘りすることへと繋がった重要な時間だったと話してくれた。
グローバル化が進み、デジタルも進化した今、国と国や人種と人種のボーダーが、一部、曖昧になり、遠くの世界に触れる機会が増えた。そのため、意識がそれらに向いてしまいがちだが、実は既に周囲は輝きに溢れている。そんな思いから、今号では「近くを見つめなおす」をテーマにお届けする。
本誌編集委員長 吉田けえな